「アネモネはギリシャ語で風という意味のanemosに由来しています。美少年アドニスが狩りの傷で亡くなるのですが、その血の中から生まれた花だと言われています」
 
「華やかそうなのに悲しい花だね」

「ええ。だから花言葉は『儚い恋』『恋の苦しみ』『見捨てられた』『見放した』なんてものもあります……よかったでしょうか? 」


 花それ自体に意味を持たせることに、どれだけの結果があるのだろう。悩み考えて贈ったそれのお礼はいつも『ありがとう』のメールだけだ。


「いいんだ。そういうの、あまり気にしない人だから」

「そうですか。それなら今日仕上げて明日配送いたしますね」


 言うなり彼女の腕がしなやかに動いて花束を仕上げていく。花についているカードには花言葉とその花の色別の意味まで記してある。

赤いアネモネ  君を愛す
白いアネモネ  真実、期待、希望
紫のアネモネ  あなたを信じて待つ

 そのどれもが正しいようで、また全て違うように感じる。