鬼の双子と新選組


「今日から暫くの間、君はここで向かいの枡屋を見張ってて貰う」
「…如何にも、普通の薪炭屋みたいですが…?」
「あぁ…だが、どうやら枡屋の主人が長州の間者らしいんだ」
「ふむ…そうですか…」

縁側まで行き、向かいの枡屋を見下ろす。
浪士が入って行くばかりで、肝心の主人が見えない。
じっと見つめていると、部屋の外から声が聞こえた。
どうやら、島田さんも追いついたようだ。

「もう先に着いていたのですね」
「はい、先に行けと言われたので」
「そうでしたか…私と山崎さんであなたの護衛を頼まれましたが、
他にも仕事があるので、夕方辺りに私か山崎さんのどちらかが
鋳掛屋に変装して前を通るので、何か異変がある時だけで良いので
壊れた鍋と共に枡屋の異変を書いた文を出して下さい」
「逆に屯所から何か連絡があれば、声かけを変えるようにするから
気を付けて聞いててくれ」
「分かりました」

そう言うと、2人が私の前で一礼して部屋から出て行った。
今日の所、何もなさそうなので何も出さない事にした。
少し退屈になった私は、近くを散歩する。

甘味処があればなぁ…。

そう思い、甘味処を探していると目の前で斬り合いが行われた。
斬り合いっつっても、怒り狂った浪士が一方的に相手を斬ろうと
しているだけなんだが…。
しかも、女相手に。

「あんさん、そこまでにしといたらどないどすか?」

そう言うと、怒り狂った浪士が私を睨みつける。