「だけど、そんなに長く持つ事はなく、もうボロボロで生きてる事で精一杯だったんです…むしゃくしゃしている内に、人殺し、という物に目覚めてしまいました…時雨は私を庇って、一緒に血を被る事になりました…ただ、それでも生きてるのに精一杯でした…」

こんな重い話を、ただ静かに聞いてくれている人達。
少し顔を顰めている人も居る。

「そんな時、ある人が私達に手を伸ばしてくれました…その人は、私達の素性を知らないまま、良くしてくれました…私達の素性を知っても驚かずに受け止めてくれました…でも、いつまでもその人のお世話になる訳にはいかないので、この腕を認めてくれるであろうと思い、ここに入隊しました」

真っすぐに見つめて、そう言い放つ。
時雨もただ、真っすぐ近藤さん達を見つめる。
意外と少し重い話だったのか、沈黙が続いた。

「…成程な、確かにお前らのお蔭で助かった事もあるが、火雨が女と言うなら出て行かさなければならない…」
「いや、火雨君ならその必要はないんじゃないか?」
「は?」
「火雨君は、女性らしさを消せる事が出来るが、いざとなれば女性の魅力を出せる…密偵の時に丁度良いと思うよ」

近藤さんがにこやかな笑顔でそう説得する。