火雨side

「さみぃ…」

私の隣で布団で丸まってる時雨が、ガタガタと震えている。
先程から、ずっと『寒い』しか言わない時雨。
まぁ、仕方がない。
私達は『冬』という物は知っていたが、こんなにも『寒い』物とは思わなかったのだ。

「寒いな…てか、あれから約1年経ったんだな…」
「あー…そうだな…」

高天原から追放され、桂さんに保護?されてから約1年が経った。
案外早いもんだな…と思いつつ、天井を仰ぐ。
しかし、本当に寒い。
気を紛らわそうと文机に向かう。
俳句でも嗜もうかと思ったが、何も思いつかない。
…どうしようか。

「時雨ー!火雨ー!!」

そう言いながら、襖をスパーン!っと勢いよく開けられた。
襖が外れそうだな…と思いつつ、襖を開けた人物を睨むように見上げる。

「…何ですか、藤堂さん」
「こんなに積もってるんだ、雪で遊ぼうぜー!」
「「嫌です」」

時雨と一緒に言うと、迫力があるのか少し怯んだようだ。
こんな寒い中、遊ぶのは嫌だ。
犬じゃあるまいし…喜んで遊ばないよ。

「えー…」
「平助、時雨達を誘ってたのか…無理強いは止めておいた方が良いぜ」

原田さんがそう言ってくれたおかげで、雪遊びをせずに済んだ。