「……あの人か」
「はい」

山崎さんは私の腕の怪我を手当てする。
……そんなのしなくても治るのに。

だって私は『鬼』だもん。

あの世界でも鉄の掟があったけど、鬼になった今も
あの世界の鉄の掟を守らなきゃいけない。
あのお方以外には自分が『鬼』だと言ってはいけない事。

ここから先は、あまり言わない方が良いね。
でも、芹沢さんの側に居て少しでも仕えるようにならなくちゃ。
そう思っていたのも束の間。
芹沢さんが大和屋を焼き討ちにしたあの日。
芹沢さんを信じてた自分が馬鹿馬鹿しくなった。