唐突に顔がゆがんだかと思うと、詠子ちゃんは顔を覆って嗚咽し始めた。
よほど追い詰められていたのか、あまりの急な崩れ方に、見かねて佐希子は腕を伸ばす。
「なんだか目に浮かぶようだわ。わたしにも経験があるから」
あるどころか、ついこの前もやったばかりだ。
「……佐希子さんなら、その後、どういう言葉をいちばん最初にかけますか?」
「そうねぇ……」
佐希子は自らの予行を兼ねて、頭をひねる。
「でもきっと、まず最初はなにを置いても謝るんでしょうね。そこから言い訳をすると思うわ」
この前はごめんなさい。昔の記憶を思い出して、すこしあなたを困らせてみたくなったの。
「その後、ちゃんと本心を伝えるの」
でもね、誰より切磋琢磨してるあなたが、夢に向かってる眩しいあなたが好きだった。
今もその気持ちは変わらない。
なんて、そういう意味じゃないわよ。
――頑張って、って。できることは、わたしも手伝う。この店から、応援してる。
もう、つまらない意地悪はしないから、って――。
「次もし会うことがあってもなくても、伝えるべきことは伝えたほうがいいって、わたしも最近気づいたわ。まちがった受け取り方をされる方が、後々、つらいわよね。……だから、詠子ちゃんもできるだけ正直になってみて。詠子ちゃんなら大丈夫よ。美味しいものを見つけたときの、あの天真爛漫な詠子ちゃん、わたしは好きだな」
「佐希子さん」

