「まぁ、そういうのが人間のむずかしいところだろ。なにもおまえだけに限った話じゃねぇさ」
「はい……」
おもむろにゴンさんの無骨な手のひらが佐希子の頭にのせられる。
「ならもう切り替えろ。近いうちに枡屋に店員がひとり増えるってことと、そいつのちょっと風変わりなスケジュールをふたりにも教えてやって、これからの五人での枡屋の運営について改めて考えていかないとな」
「――そうですね。尾久山さんのこと、ちゃんと面倒みてあげなきゃ」
「そいつだがな、俺は正直、佐希の提案はあながち悪くはなかったと思うぞ」
「そうでしょうか?」
「やっぱり、ヨシは別格だからな。一流店で磨いた腕は本物だ。もとからの才もある。枡屋で学べることももちろん多いだろうが、ヨシの下にいるからこそ習得できるものも少なくねぇだろう。まぁそこは嬢ちゃんの考え方次第だが。……あんましいろいろ考え過ぎるな。どのみち嬢ちゃんにとって悪いようにはならないんだ。いいな、佐希」
ゴンさんの飾り気のない優しさが心に染みる。
誰よりもわたしのことをわかってくれて、そして、いつだってわたしの味方になってくれる人。
だからわたしもなんでも打ち明けられる。

