感情を殺して言えば、かえって気取った言い方になった。
吉川さんはさすがにすこし傷ついた様子で眉をひそめ、
「嫌な女になったな」
冷ややかに言って、暗い目を伏せた。
「今はわたしが女将ですから。でも誤解しないで。これが尾久山さんを雇いたくないための言い訳ではないってこと。吉川さんがわたしの言葉をどう受け取ろうと勝手ですけど、そこまでわたしはひねくれてないわ」
「……佐希子」
「――さてさて、このへんでちょっと気分を変えましょうか」
つとめて明るい声音で言って、佐希子は持ってきた塗りの椀を互いの前に置いた。
「おばあちゃんのぜんざいです。吉川さん、好きだったでしょう? わたしが作ったからちょっと味がちがうかもしれないけど、そのへんはご愛嬌ね」
匙を渡すと、困惑気味な表情を見せながらも吉川さんは素直に受け取り、両手で椀を持った。
空気を察し、ゴンさんは一足先に居間を辞すると、足音を殺して厨房と戻っていった。

