「条件?」
「尾久山さんには、吉川さんのお店のこれからの展開について、リアルタイムで情報を流していただきたいの。先代への誓いをこれから吉川さんがどう現実にしていくのか、わたしも興味があります」
吉川さんは不可解そうに眉をひそめて佐希子を見据えた。
「それはどういう意味だ、佐希? こっちに移っちまった後、ヨシのことをつぶさに把握するなんて無理だろう」
「うちにも定休日がありますから、半分の週三日はうちに来てもらって、残りを吉川さんのところで引き続きつかってあげてください」
「佐希子」
その瞬間、餅がこげたところから薄絹のようにふくらみ始めたところで、佐希子は火を止め、椀によそったあんこの中へ餅を浮かべた。
それを盆に載せて居間に運びながら、
「ていうのはね、本音でもあるけれど、やっぱり半分は建前なの。わたしもよくわからなくて。今の四人の状態が五人になったときのこともそうだけど、新しい人を雇い入れるのはいつだって勇気が要るものよ。暖簾を引き受けた以上、どうしても今と来し方に重きを置いてしまうの」
「決して荷物にはならない女だ」
「それでも慣れるまでは提案を飲んで欲しいんです」

