「だ、だいじょうぶ!? ごめん、わたし、いきなり声かけたから……」
「う、ううん、平気。ちょっとびっくりしたけど、自転車倒れただけだから」
「転ばなかったか?」
「……わたしは、なんともない」
恥ずかしい。
八津くんがわたしを見てる。
でもそれより、悔しい……。
ふたりが寄り添ってわたしを心配してるなんて。
こんな惨めな気持ちになるくらいなら心配なんかされない方がマシだ、と詠子はカゴのひしゃげた自転車を急いで起こすと、曲がったサドルの向きを力任せに直そうとした。
「俺、やるよ。固いんだろ」
「平気」
むしろ触らないでとばかりに背を向けて、もうひと踏ん張りすると、今度は勢い余ってますます変な方向に曲がってしまった。
――ああ……。
じわりと目頭が熱くなった。
「あぁあ、これじゃ乗れないよ。女には無理だって。ショウちゃんにやってもらおうよ」
「――いいよ。家に帰ってお父さんに頼むから」
「家、近いのか?」
「うん、もうすぐそこだから。ありがとう。それじゃあ……」
一息に言うと、それ以上なにか言われる前にと詠子は自転車を引きながらできるだけ急いで帰路を進んだ。

