明日は三校分の弁当を用意するため、枡屋の働き手を総動員して調理にあたる予定だ。
詠子ちゃんには詰め方の作業を担当してもらうことになっていた。
町内会の仕出しに手を貸してもらったのは、この日を見越した予行でもあったのだ。
嶋工もなかなかの大所帯だが、残り二つの学校はいずれも私立で、同様に名門ということもあり、生徒の数もコーチの数もさらにその上をいくらしい。
試合も、学校の練習場と、すこしはなれたところにある球場のふたつを使って、豪勢に総当り戦をすると聞いている。
「じゃあそういうことでお願いします。お疲れさま。気をつけてね」
「はい。お先に失礼します」
大事そうにかぼちゃを抱えて帰っていく詠子ちゃんを見送って、佐希子は次にやるべきことの手順を頭でさらう。
スプーンについたかぼちゃを行儀悪く舐め取りながら、そういえば、と唐突に思い出した。
(あずきと言えば、おしるこよね)
――吉川さんの好物。
先代であるおばあちゃんの、手作りおしるこ。
固くなった正月の餅をこんがり焼いて、とろりとした特製の汁にのせていただく。
おばあちゃんは、料理屋の店主でありながら、あずきの扱いにかけては天才だった。
思い立ち、タンスの中を漁れば、大事に保管している和三盆が顔を出す。
(野球部の合宿が終わってすこし落ち着いたら、吉川さんに電話しよう)
手のなかの和三盆を見つめ、佐希子はついに心を決めた。

