「はい、なんでしょう」
カウンターから顔を覗かせたのは例の八津くんだった。
それでなくてもがやがやとうるさい食堂なのに、周りに聞かれたくないことなのか、つとめて声のボリュームが抑えられているせいで全然聞こえない。
佐希子は自らカウンターに近づいた。
「ご飯のことかしら?」
「いえ、そうじゃなくて……、午前中、ここに誰か来たりしませんでしたか?」
「誰か、というと、先生? それとも生徒……男の子? 女の子?」
聞くと、八津くんはますます居心地悪そうに、
「……女子生徒なんですけど」
まあ。
「さぁ、気づかなかったわ。誰かしら入って来たらきっとわかったと思うけど。なにか約束でも?」
「いや、来てないならいいんです。すいません。ありがとうございました」
あらあら。これは、一体、どういうことかしら。
詠子ちゃんが、おそらくは八津くんの彼女でないことからして、いろいろな憶測が出来る。

