おいしい時間 しあわせのカタチ



「――いいことも悪いことも、重なるときって重なるのねぇ」


 嶋工の北寮、食堂。

 昼食用のカレーに使う材料の下拵えをしながら、佐希子はなにか神妙な気持ちで、ここ最近のめまぐるしい日々について思いをめぐらせている。


「……いつ先輩を店に呼ぶつもりです? いや、呼べるんですか? そんな状態では……ないですよね」

「でも、近いうちに声をかけるつもりではいます。直に投函されていた封筒が、やっぱり気になりますから」



 ――どうしても佐希子さんに相談したいことがあり、筆を取りましたが、やはり面と向かって話がしたいと思いますので、都合のいいときに電話をください 吉川



 昨夜の不可解な手紙は吉川さんからのものだった。

 ホテルの営業不振に関する記事が出てまだ数日しか経っていないことからして、嫌な予感しかしない。

 まさかとは思えども、金銭的な話だったらどう言って断るか、と昨夜はそればかりを考えて思うように寝つけなかった。おかげで余計に寝不足だ。

 寮での仕事が終わったら久しぶりにエステでも行こうか。いや、絶対行く。


「俺からも頼みます。……先輩の性格は佐希子さんもよくご存知だと思うんで言いますけど、やっぱり相当追い詰められているんじゃないかと……」

「まぁ、それは話を聞いてみてからでないとなんともですけど、丹後さんこそあまり思い詰めないようにしてくださいね。力になれることがあれば、なるべくわたしも善処しますから」

「はい、すいません」