おいしい時間 しあわせのカタチ


 くるくる変わる顔色と心の底から安心した様子を見て、佐希子はついからかいたい気持ちに駆られたが、こういう様子だからこそ一番おもしろがってはいけないことは自身にもそういう時期があったからわかる。 

 佐希子は意識の半分を足元のダンボール箱に束になって入っている泥つきのネギに移し、明日はこれと豚肉で一品にしようと思案した。


「ささ、暗くなったからもう帰って。急な頼みごとだったし、春休み中なのにあんまり帰りが遅いとお母さんたちも心配なさるでしょうから」

「はい。それじゃあお先に失礼します。ありがとうございました」


 店の外で割烹着を脱ぎ、自らのカーディガンを羽織ると、詠子ちゃんはわざわざ塀伝いに表に回って帰っていった。