フテキな片想い



上半身を起こした所で、目の前に影が現れた。


包丁が振りかざされ、恐怖に叫ぶ彼女の顔から、目のアップに画面が切り替わる。




「あー、めちゃくちゃ怖かったよー」


エンドロールが流れ始めると、星夜は安堵の溜息を吐いた。


「な?馬鹿にしてたけど、意外に面白かった。まさか、殺人鬼の正体が、最初に殺されたはずの父親だったなんてな」


「あれね。僕も素直にそう来たかっ!って思ったもん。まさかの二重人格設定だし。美雨ちゃん、大丈夫だった?」と星夜が俺の隣を覗き込んだ所で、「おっ」と小さく声を上げた。


「途中で寝やがった。映画観ようって言った、言い出しっぺのくせして」


ソファの肘掛けを枕にして寝息を立てる美雨を指差して、答えた。


「どうするの?起こす?」


星夜は急に声のボリュームを下げて、訊ねる。俺は首を横に振った。


シアタールームのある地下は、まだ暖房設備が整ってないから、このままここで寝かせたら、きっと美雨は風邪を引いてしまう。最近、朝晩がぐっと寒くなって来たし。


「このまま美雨の部屋に運ぶから、手伝ってくれ」


「OK」


星夜は頷くと、右手でサインを作った。