「ごめんね、急にメールして。丁度、真央のバイトが終わる頃かなって思って、一緒に帰ろうかなって。今日ね、図書館にテスト勉強しに来てたんだ。芽衣子がね、この近くにある図書館がオススメだって。綺麗で広かった。新しく出来たんだって」
息を切らしながら、目の前に立つと矢継ぎ早に話し出す。
俺の後ろにいる幡谷さんに気付き、笑顔を浮かべて、「こんばんは」と声を掛ける。
急に不意を突かれたのか、驚いた表情の幡谷さんは「こ、こんばんは」とどもりながら答えた。
「もしかして、児玉のカノジョ?」
肩の辺りを指でつつきながら、耳元で囁くように幡谷さんが、訊ねて来る。
「いや、カノジョっていうか、家族っていうか」
上手く説明が出来ない。
バイト先の人たちには、俺の複雑な家庭環境の話はしてなかった。
「いや、全然。カノジョなんかじゃないですよー。彼は私の弟です」
にっこりと笑ったまま、美雨はすっぱりと否定した。
少し、傷つく。
「弟?」
「そうです、弟。私の方こそ、真央がカノジョと一緒に出て来たのかと思っちゃいました」
「いや、彼女はただのバイトの先輩だから。変な勘ぐりすんなよ」

