「テスト期間だけど、いつも本格的にテスト勉強始めるのって、大体三日前位からなんで」
「あ、解る。私も」
フッと微かに彼女の口元が綻んだ。
自分の学生服を取り、着替えのために脱衣所に入ると、制服のズボンに入れたままになっていた携帯が、点滅しているのに気が付いた。
「じゃ、お先します。お疲れした」
着替えを終え、その日の仕事内容や感想を記入するスタッフ用の日誌に、とりとめのない事を書き殴る。
丁度、仕事を上がって来たばかりのキッチンのスタッフに、席を譲るタイミングで席を立ち、足早にスタッフルームを後にする。
「あ、私も帰るわ」
仕事を終えたばかりの大学生バイトたちの空間に居ずらさを感じたのか、幡谷さんも席を立つ。
「児玉ってさ、この後、そのまま家に帰るの?」
ホールスタッフが出入りするバックスペースを入店扉に向かって歩いて行くと、幡谷さんが訊ねて来た。
「えっと、そのつもりですけど……どうしたんスか?」

