幡谷さんが、脱衣所に入ろうとしていた所で、バックヤードからタバコ休憩に出てた光浦(みつうら)さんが、スタッフルームに入って来た。
「お、姉御、今日は女装してんのか?相変わらず、スカート似わなねぇなぁ」
ひゃひゃっと笑いながら、光浦さんは幡谷さんの肩を叩く。
ちなみに光浦さんは大学生だ。
彼も年下の幡谷さんを「姉御」と呼ぶスタッフの一人だ。
コック帽を脱ぎ、ペンナリとした髪を手櫛で整えている。
「うるさい。とっとと帰れよ、光浦」
光浦さんにガンを飛ばしながら、幡谷さんはバン!と音を立てて、脱衣所のドアを閉めた。
「おー、怖っ」
そう言いつつも、楽し気な表情で、光浦さんはテーブル席に腰を下ろした。
「今日、ランチタイムだったんスね?」
「あぁ、講義が休みになったから、急遽ね。真央、悪いけど、水持って来て」
壁に掛かったスタッフ用の連絡事項のバインダーを手に取りながら、光浦さんは告げる。

