フテキな片想い



ガタンと車体が大きく揺れ、我に返った。


車内アナウンスが、次の駅を伝える。


電車がホームに滑り込むと、大きく息を吸い込んで、一歩を踏み出した。


制服姿の学生がちらほら、改札口に向かっている。


パスケースに入れたICカードをタッチし、改札を出る。


雑多な商店街を通り過ぎ、大通りに出た所、交差点の向かいに見えてくるのが、俺の働くファミレスだ。




「おはよう」


スタッフルームの扉を開けると、テーブル席に座って問題集に向かっている制服姿の女子と目が合った。


「はよッス」


返事をすると、「もう、こんな時間かぁ」と壁時計を確認し、テーブルに広げたノートや筆記具を片付け始める。


彼女の名前は幡谷つばさという。


美雨と同じ坂の上女子高に通う二年生で、このファミレスでのバイト歴は、俺よりも長い先輩だ。


俺は不愛想にも関わらず、「今、募集してるのはホールスタッフなんだよね」と面接の際に、ぽっちゃりメガネのおっさん店長に言われた。


働ければどこでもいいと思ってたので、承諾してホールスタッフになったけれど、幡谷さんはキッチンスタッフだった。