「ひどいです、遠藤さん。彼だって知ってたんですか?」
遠藤さんは厨房で、鉄板の上で十分冷ました動物型のプレーンクッキーを、ビニール袋に詰めていた。
計りで分量をチェックしながら、彼女の手際はリズミカルでテンポがいい。
私は空のバスケットを持って、彼女の隣に立った。
作業台に並んだクッキーが入ったビニール袋に、赤いモールを使って、口を閉じる。
閉じたクッキーの袋を、空のバスケットに並べていくのだ。モールはクッキーの味によって、色が変わる。
「だって、九月に入ってからも、美雨ちゃんが出勤してる日は毎日来てるのよ。よっぽど美雨ちゃんに気があるのね」
遠藤さんは作業を続けながら、ウフフと含み笑いをする。
絶対、面白がってるなと口を尖らせていると、「若いっていいわねー」と独り言みたいに、こちらに首を傾げながら呟いた。
気があるも何も、こっちとしてはかなり迷惑な話だ。
バスケットに並べたプレーンクッキーに値段を付け、ショーウィンドウの上に置くと、私はクマさんテーブルを覗いた。
彼はコーヒーを飲みながら、音楽を聴いているみたいだった。イヤホンが耳に付けられ、手元の携帯電話を操作している。
ミルクティー色の明るい髪色をしている。緩いパーマの掛かった髪型に、奥二重だけと長いまつ毛、面長で、高くて大きな鼻に口角の上がった紅色の唇。

