フテキな片想い



「お待たせしました。カフェモカと、こちらミケ猫ドーナッツです。ごゆっくりどうぞ」


注文の品をテーブルの上に置き、お決まりの言い回しを述べる。


一礼して、そそくさとその場を離れようとすると、「え~、もう行っちゃうの?ミウちゃん」と二名様用のクマさんテーブルに座る一名様の彼が、大げさに声を上げた。


「美雨って、何で私の名前……」


確か自己紹介をした覚えはない。


「だって、店長さんがいつもミウちゃんって呼んでるし。ねぇ、ミウってどういう字を書くの?」


「美(うつく)しいに雨(あめ)で___って、何、言わすんですかっ!」


「美しい雨……おぉ、何か詩的な名前だね。中瀬美雨ちゃんね。覚えた。あ、ちなみに苗字はここで解っちゃった」


彼はにっこりと笑いながら、自分の胸の辺りを指差す。


……エプロンの左胸に「中瀬」とネームプレートが付いているのを、確認したらしい。


「私、仕事中なんで、失礼します」


何なの、もう!調子が崩れる。


踵を返すと、キッチンへと戻って行った。