「幡谷先輩は、めっちゃ唄が上手いし、それはもぅ、カッコイイのだから。男装女子って萌えるー。球技大会で、学ランとか着て、応援団とかしてくれないかなー」
芽衣子の妄想電車が発車したようだ。
こうなって来ると、誰にも止められない。
「芽衣子のお気にの先輩の話は、また後でゆっくり聞くとして、そろそろ実行委員の集まり、始まっちゃうんじゃない?」
「……そうだった!ヤバイっ!じゃあね、美雨、また明日!」
黒板の上にある時計を確認すると、芽衣子は慌てて教室を後にした。
ツインテールを揺らしながら、バタバタと忙しなく廊下を駆けて行く彼女の足音が、聞こえて来る。
「廊下を走ってはいけません!」生活指導に見つからないといいけど___さて、私もそろそろと、カバンを右肩に掛け、教室を出た。
夏休みの中頃から私は、人生初のアルバイトを始めた。
家の前の通りを商店街とは反対方向に進んで、十分くらい歩くと、スーパーやドラックストアなどが並ぶバス通りに出る。
その中の一角にあるのが、私が働くカフェだ。

