「……あの」
やっとの思いで絞り出した声は掠れていた。口の中がカラカラに乾いて、唾を飲み込む。
「蛍さんが私の事、好きって言ってくれたの……すごく嬉しいです」
舞台上、スタンドマイクの前に立つ蛍さんの表情が、ぱっと明るくなった。
ドクドクと恐ろしい程に高く鳴る鼓動を、必死に押えて、深呼吸を繰り返した。
「……私、蛍さんが好きです。でもそれは、友達としての好きで、男の子としてとか、恋人としての好きとは、また別の感情なんです。だから、ごめんなさい。蛍さんの気持ちに答えられないです」
緊張と申し訳ない気持ちで、声は震えて、頼りなかった。
深々と頭を下げた瞬間、コントのオチのように大音量の女々しくてが、体育館に響いた。
蛍さんは、呆然としたままその場に立ち尽くしていた。
「おおっと!これは予想外の展開です。大本命の遠野くん、振られるー!!ちょっと、遠野くん、大丈夫?お~い、戻って来~い」
目の前で手を翳しながら、司会者の生徒が蛍さんに声を掛ける。
蛍さんは、そのまま司会者の人に支えられて、舞台袖にはけて行った。

