「坂女のプリンス?」
初耳なワードに思わず訊き返してしまった。
プリンス?プリンセスじゃなくて?
「美雨は学区外からの入学生だから知らないかもしれないけど、入学当初から有名な先輩なんだよ。女にしておくのがもったいない位のイケメンだって」
「見て」と芽衣子は携帯を取り出し、画面を私に見せる。
中世の貴公子とお姫様と言った所だろうか、コスプレをした人が写っていた。
「何コレ?ハロウィーンか何か?」
「もぅ、ちがーうー。坂女の学祭名物「坂の上歌劇団」だよぅ!私、ここ受験するって決めてたから、去年の学祭来てたの。去年の演劇でベルばらやってたの。私はオスカル様役の幡谷(はたや)先輩に、一目ぼれしたの。こっちの、男装の方の人ね」
そう言いながら、芽衣子は画面を指差す。
そんな風に言われても、見せられた写真は舞台の上手からで、肝心な貴公子様が横を向いてしまって、残念ながら顔が解らない。
金髪長髪のウェービーなカツラをかぶっているせいもあるんだけど。
青を基調として、肩と胸の辺りに金の装飾がされたジャケットに、白いタイトなパンツを履きこなす姿は、確かに凛として見えるけれど、少し背は低め?マリー・アントワネット役の先輩の方が高く見える。

