声の主は、そう言って、暗闇の中で懐中電灯を光らせた。
「蛍さん?」
そういえば、お化け屋敷の中で見かけなかったと今、思い出した。
ドラキュラ伯爵に扮する蛍さんは、襟の立ったマントを羽織っていた。
中にフリルの付いたゴージャスな感じのシャツを着ている。
少しメイクもしてる?目の周りが黒かった。唇からは尖った歯が見えている。
「凝ったコスプレですね」
まじまじと眺めていると、「似合う?」と訊かれたので、素直に「似合ってる」と頷いた。
「これね、歯が超大変。口が閉じないの。油断してると、よだれが垂れてくんの」と話づらそうに、歯を指差して笑う。
「本当はさ、フランケンの椅子の後ろに隠れてて、お客さん来たら脅かす設定なんだけど、ちょっとサボってた時に美雨ちゃんが来たから焦ったよ。捕獲できて良かったよ」
「捕獲って……蛍さん、私、芽衣子とつばさんを待たせてるから、あんまり長居出来ないんですけど……いつまで経っても出て来なかったら心配すると思うし……」
「あ、そうだよね。引き留めちゃってゴメン。写メだけ撮っていい?コスプレした記念ね。しゃがんでくれる?」
蛍さんは携帯を掲げると、自撮り画面に収まるように顔を近づけ、「イエーイ」と言いながら、ポーズを取った。
「あ、目瞑っちゃった。懐中電灯の明かりが眩しくて、美雨ちゃんがかわいく撮れてるからいいか。後で送るね」

