教室の清掃が終わり、ぴっちりと縦横に揃った机で、帰り支度をしていると、すでにカバンを右肩に掛けた芽衣子が、私の前に立った。


「芽衣子は___」と訊ね掛けた所で、「あぁ、球技大会の集まりだっけ?」と思い出した。


数日前のホームルームにジャンケンで負けて、芽衣子はこのクラスの球技大会実行委員に任命されていた。


「何で私なの、運動神経、皆無なのに~~~」と彼女は実行委員に選ばれたことを、本当に嫌がっていた。


「クラスの代表だし、大変だとは思うけど、私に何か出来ることがあったら___」


そう言い掛けた所で、「ねぇ、美雨、聞いて!私、実行委員になって超ラッキーって思ってるんだぁ」と満面の笑みを浮かべながら、上半身を左右に揺らした。


決まった時の絶望ぶりとは真反対の反応に、「何で?」とつい訊ねてしまった。


その質問を待ってました!と言わんばかりに、芽衣子は「じ・つ・は~」と私の目の前で人差し指をメトロノームみたいにチクタクさせた。


「坂女(さかじょ)のプリンス様も、同じ実行委員だったのー、キャー」


彼女はそう言い切ると、興奮のあまりその場で駆け足足踏みを始めた。