フテキな片想い



井岡が隣で渋い顔をしている。


さっきはその女にモテたいって言ってたくせに、自分勝手な奴だ。


「でも井岡くんの先輩、フォロー上手いよね。見てて不快感ないし。ホント、司会者に向いてるよ」


「続きまして、エントリーナンバー10番、ちょっと僕的には、君ここ出ちゃうの?カノジョいそうだけど?って感じなのですが、本人たっての希望で、参加してもらいました。2年G組、遠野蛍くんでーす」


来た。


ヘラヘラと笑みを浮かべながら、蛍先輩が舞台袖から出て来た。


「いやー、僕、実はこの遠野くんと同じクラスなんですけどね。彼、めちゃくちゃモテるんですよ。髪型も剃り込みなんか入れちゃって、オシャレさんですしね。みんなに優しいしね。いい匂いしますしね、あ、僕、今、変態でしたね」


観客から笑いが起きる。


俺は手にしたマイクを井岡に押し付けた。


「そんなモテ男のハートを射止めたお相手は誰なんでしょうか?では、遠野くん、張り切って告白しちゃって下さい!」


MCが舞台袖にはけると、蛍先輩は舞台の中央に設置された段に上がり、目の前のスタンドマイクの高さを調節した。


会場がしんと静まり返り、みんなが蛍先輩に注目している。


会場をぐるりと見渡す蛍先輩の視線が、一点に定まった。