フテキな片想い



慌てて水で傷口を洗い流す。傷は浅いようだ。暫くティッシュで押さえて、止血した。


玉ネギを取りあえず放置し、先に卵を割っておこうと考えた。流しの縁を使って、殻を割る。ボールに中身をあけると、細かい殻が大量に入り込んでいた。


なぜこうなった?米が炊ける前に既に、オムライス作りに挫折しそうだった。


ガチャガチャと玄関で音がしたと思ったら、蛍先輩が帰って来、扉が開くなり、目が合った。


「お、真央、帰ってたんだ」


「あ、お帰りなさい」


ぎこちない挨拶を交わす。


「何?料理してんの?」


靴を脱ぐなり、蛍先輩は俺の行動に興味あり気に、近づいてくる。


「はい。オムライス作ろうと思ったんスけど……この有様です」


殻が散らばった卵を見せると、蛍さんは「殻、めっちゃ入ってんじゃん」と笑い声を上げた。


「ちょっと、待ってて。着替えてくるから」と言い残すと、カバンを右肩に掛け、自分の部屋と消えて行った。


暫くして、部屋着に着替えた蛍さんが歌を口ずさみながら、リビングに現れた。


流しで手を洗い、腕まくりをすると、ボールの中の卵を溶く。


カッカッと菜箸を小刻みに動かし、十分に混ざった所で、棚から目の細かいザルを取り出し、その上に溶いた卵を移した。