それなのに、私には偉そうなこと言ってたのに、自分はずっと我慢してたみたい。


真央のお腹の中には、前の私みたいに、モヤモヤが渦巻いてるんだ。


「玲央さん、真央も私も、もぅ子供じゃないよ。社会的には未成年で、親の承諾がないと出来ないこともたくさんあるけれど、私たちも私たちなりに、色々考えてるんだよ。真央は、ずっと自分は玲央さんの負担だって思ってたみたい。施設に居る時も二人暮らしをしていた時も、オールマイティな玲央さんと違って、真央は不器用だし」


「荷物だなんて……そんな風に思ったことないよ……」


「うん。頭では解ってるんだけど。そう言ってくれてもやっぱり、真央は色々考えちゃうタイプだから。高校卒業したら、一人暮らししたいって言ってた。今、バイトしてるのも、頭金作るためだって、教えてくれた」


玲央さんは呆然としていた。


食べかけのティラミスのお皿をお盆の上に置くと、頭を押えて、はぁと小さく溜息を吐いた。


「僕は、温かい家庭を持つのが夢だったんだ。食卓を囲んで、休日にはみんなで出掛けたり、他愛のない事を語りあったり、この家で、子供の頃の寂しかった思い出が全てリセットされるような、家族を作りたかったんだ。晴美さんがいて、美雨ちゃんがいて、真央がいて、生まれてる新しい命があって、みんな一緒だったら、きっと幸せになれるって、勝手な未来予想図を企ててた。それって僕の独りよがりだった。真央がそんな風に思ってたなんて、気付かなかった。……兄、失格だね」