フテキな片想い



「美雨ちゃんって、本当においしそうに食べるよね」


「嫌だ。またがっついてました?」


「そういうんじゃなくて、美雨ちゃんが食べている顔見てると、こっちが幸せになるというか、作ってる方としては、すごく嬉しいよ」


「この間のスタンダードなのも美味しかったけれど、こっちも美味しいです。玲央さん料理ブログ始めたら?きっと料理本出せるよー」


いいんだ、僕は家族に食べて貰うのが、嬉しいんだからと玲央さんは謙遜した。ほうじ茶を飲みながら、「何の漫画?」と逆に訊ねてくる。


「芽衣子に借りたんです。私が恋愛に対して前向きじゃないから、恋愛漫画で恋したいっていう気持ちを勉強した方がいいって___」


笑い話になると思ったら、玲央さんの表情が一瞬曇ったので、しまった!と思った。


「……ごめん。多分それって、僕が美雨ちゃんを___」


「うわーっ!今の無しっ!私の言い間違いっ!玲央さんはもう気にしなくていいんだってばっ!」玲央さんが言い切る前に、必死で捲し立てた。


迂闊だった。私自身は、玲央さんが好きで想いを告げて、失恋して、失恋した時は悲しくて号泣したけれど、気持ちはスッキリしていた。


玲央さんの中には、私の玲央さんに対する想いが取れないしこりみたいに、まだ残ってるんだ。


自分だけスッキリして、玲央さんを困らせていたと解ると、とても申し訳ない気持ちになって来た。