フテキな片想い



「いや、喧嘩というか……」


「美雨ちゃんとじゃなかったら、お兄さんと喧嘩したの?」


それともちょっと違うような……答えあぐねていると、蛍さんはぐっと両手を空に突き出し、伸びをした。


「実は俺も、真央と喧嘩しちゃったんだよね。弟に家、追い出されてさー。今は叔父さんの家に泊まってるワケ。普通、逆じゃね?弟なら、兄を弁護するよなー。叔父さんち、汚ねぇし、加齢臭するし、最悪なんだわ。独男の負のオーラが乗り移りそだし。だからあんまり家にいたくなくて、ブラブラしたり、文化祭の準備を真面目に手伝っちゃったりしてるのよ。だからゴメン、美雨ちゃんの質問には答えられないや」


蛍さんは、申し訳なさそうな顔をすると、再び歩き出した。タコのすべり台のある公園を通り過ぎると、商店街に出る。


「真央と喧嘩したって?何で?」


そう訊ねたけれど、「男同士には色々あるのさ~。心配しないでね、殴り合いとかしてないし、ぶっちゃけ俺、真央のこと結構気に入ってるんだ」と、答えははぐらかされてしまった。


駅に着くと、改札口の前で、蛍さんと別れた。


「送ってくれてありがとうございました」


蛍さんが持ってくれていたケーキの箱を受け取り、お礼を言うと、


「俺らって、傍からしたら別れを惜しむ、高校生カップルに見えるかな?」とニヤニヤと周りを見渡しながら訊いてきた。