「家まで送るよ」
「今日は友達の家に泊まりに行くんで、家には帰らないんです」
「友達んちってどこ?」
「電車に乗って行くんで」
「じゃあ、駅まで送るよ」
貸して、持ってあげるよと、蛍さんはニコニコしながら、私の手からケーキの入った箱を取った。二人並んでバス通りを歩いていると、いつもは私服の蛍さんが、今日は制服姿なのに気付く。
紺のブレーザーにグレーのズボン。ベージュのカーディガンが、前ボタンを留めていないブレーザーから覗いている。
Yシャツのボタンを第二ボタンまで外し、緩く結んだネクタイから、ネックレスと鎖骨が覗いている。
制服着ててもチャラさが全開だ。
「蛍さんの制服姿、初めて見ました」
「お?制服お初だったっけ?萌えた?」
「今日、土曜日なのに、こんな遅い時間まで、文化祭の準備だったんですか?」
蛍さんの質問は無視して、続けて質問する。
「そうそう。二日から文化祭だからさ。明日も、準備で登校しなきゃいかんのだよ」
バス通りを右に曲がり、住宅地に入った。ポツポツと街灯が照らす道標に、人影はない。

