「美雨」
名前を呼ばれて廊下側を振り返ると、扉からつばさんが顔を出していた。
「つばさん、こんにちは。珍しいね、つばさんが一年生の教室に来るなんて」
「うん。自分が一年の時、以来。美雨、今日一緒に帰らない?もちろん芽衣子も」
つばさんはカバンを右肩に下げ、教室を覗いた。芽衣子を探してるみたいだ。
「私、今日、日直なんで、ちょっと待ってて貰っていい?もう少しで日誌が書きおわるんで。芽衣子は今日がバイトの初日らしくて、六限目終了のチャイムが鳴ると同時に帰っちゃった。きっとつばさんが来たって言ったら、羨ましがるだろうなぁ、残念。よかったら、中にどうぞ」
席に戻り、日誌に取りかかる。
つばさんは私の前の席に座り、こちらに体を向けて、日誌を覗き込んでいた。
「芽衣子、バイト始めたんだ?」
「家の近くのケーキ屋さんだって。パティシエがイケメンらしい」
「イケメンで店を選んだの?芽衣子らしい」
フフフとつばさんは笑い声を上げた。
「美雨、バイバーイ」「うん、また明日ねー」
先に教室を出るクラスメイトに返事をする。

