「今は友達の家に泊まってるみたいです。文化祭の準備を一緒にしてるらしいです。ごめんなさい、昨日の内に玲央さんに言わなきゃいけなかったのに、私、混乱してて、気付いたら真央の部屋で寝ちゃってて……」


「美雨ちゃんが謝ることないよ。僕の方こそ、ごめん。せっかくの誕生日だったのに、あんな風に場の空気を凍らせるような事しちゃって」


私は大げさに首を横に振った。


「本当、いい大人なのに、空気が読めなくてごめんね。昨日、真央に言われたこと、結構胸に突き刺さった。その通りだなって」


「そんな事ないですよ」って言えなかった。


きっとそう言ったら、玲央さんの気持ちは少し楽になるのかもしれないけれど、私には真央の気持ちも痛い程、解るからだ。


ママと玲央さんが幸せになるためには、自分はいらないっていう気持ち。


私は残りのフレンチトーストを口の中に押し込むと、カフェオレと一緒に飲み込んだ。


「今日、日直だから早めに出ますね。じゃあ、ママのこと、よろしくお願いします」


最もらしい言い訳を付けて、席を立つ。


「あ、これ、お弁当。今日寝坊しちゃって、ラップサンドと果物なんだ。もし足りなかったら、購買で何か買って。お小遣いいる?」


「ううん、お金はいらないです。玲央さん、いつもおいしいお弁当ありがとう」


お弁当箱だけを受け取って、リビングを出た。