「…でね、彼ったら言ったんですよ。『だって、社会人になったら遊びたいじゃん?』って」

「そりゃあ、キツいな~」

「でしょう?2年ですよ、同棲2年。私の一番いい頃。別れ際に“時を返せっ”て、叫びましたからね~‼」

「まあ男からすれば、分からんでもないよ?…にしても、正直すぎらあな」


 1時間後。

 市内の個室居酒屋で、私たちはすっかり出来上がっていた。

 自慢じゃないが、某南の地方都市の体育会系サークルで鍛え上げられた私は、かなりの酒豪である。

 大神さんもまた、かなりイける口のようで、さっき10回目の乾杯を交わしたところである。

「俺なんかよ、秘書課の松嶋さんとよ?普通にデートに行くわけさ。…普通に飯くって、金払って、何?カクテル飲んで、ホテルだって行くわけさ」

「ああ、大神さん、どっちかって言うと、居酒屋よりはカクテルバーってイメージれすよねぇ」

 呂律の危うい私は、すかさず話の腰を折る。

「馬っ鹿、俺ぁどっちかって言えば、こっち派だよ。金かかるんだよ…で、だよ」

 彼は続ける。

「ホテル行って、何もせずに寝るわけさ。松嶋さんなんて堂々とシャワー浴びて、『じゃ、お休みなさい』って。
 あの松嶋さんと二人っきりだぜ?
 俺はソファーでまんじりともせずに夜明かし…
 どうだ、なっさけないだろう」

「うわぁ、それはお気の毒。
 ガーっと行っちゃえばいいんらよ。
『舐めるなよ』って」

「アホ、社長の女だぞ。
クビが飛ぶっての。
 あ、他の奴らに絶対言うなよ」

「言いませんって。らいじょうぶ、見てみてっ、ホラ。お口をチャック。
 情けないオオカミさんに、乾杯っ」