初めて連也を見る藤吉は、思った。

(若いな)

このとき、連也は十八である。

がっしりとした体格は、父親ゆずりといえよう。

六十半ばの利巌の年齢からして、彼の子供であるならば、もっと歳をとっていると思うのが普通かも知れない。

ともかく、藤吉は連也に頭を下げると、伝えるべきことを告げる。


「あっしは、藤吉といいます。利巌様から、巌包様を呼んでくるように頼まれまして」


藤吉は、このまま何も考えずに、連也をつれて屋敷へ帰ろうとする。

ところが、思わぬ事態に直面する。

それは、連也のひと言から始まった。


「待て」


早く帰ろうと、連也に背を向けていた藤吉は、その声に振り返る。

連也の目が、鋭く光る。


「おぬし、いままで何人ひとを斬った?」


藤吉は、ギクッとした。

それが顔にも身体にも現れる。


「やはり、な」


連也の左手が、刀の鞘にかかる。