利巌から、田村の屋敷までの道のりを聞いた藤吉は、さっそく連也斎巌包を呼びに向かう。

刀は腰に差さず、いかにも利巌の使いという感じで、やや背中を丸めながら歩いて行く。

出かけるまえに、利巌から「気をつけてまいれ」と言われた。

尾張の町は、それほど物騒な町なのかと思いながら、藤吉は足早に歩を進める。


藤吉は田村の屋敷に到着すると、屋敷の前で声を上げた。


「ごめん」


しばらくして、女の人が出てきて顔を見せる。

藤吉は、彼女に頭を下げた。


「あっしは、柳生の利巌様の使いの者です。利巌様から、巌包様を呼んでくるようにと言われたのですが…」

「あ、連也様ですね」


了解した彼女は、屋敷の奥に引き返して行った。

(結構、大きな屋敷だな)

藤吉がそんなことを思っていると、連也が静かに姿を現した。