呆然とたたずんでいた虎之助は、ハッと我にかえると、塀の方へ駆けよって行く。

塀のそばまで来ると、外で待っている仲間に伝える。


「利巌様が、みんなも来いと言っておられる。皆、中へ入れ」


外にいる五人はその言葉を聞くなり、虎之助とおなじように塀を乗り越えようとする。


「こ、これ、表の門から入らぬか!」


一喝する虎之助。

他の五人は、虎之助とおなじことをしているのに、なんで怒られるのかという顔をする。

ともあれ、虎之助とその連れ五人は、利巌の屋敷の中へ入って行くのだった。