籠をかついでいた男の一人が、娘を籠の中から引き出す。

もう一人は、浪人風情の男から駄賃をもらっている。


「へへ、どうも」


籠の男たちは貰うものを貰うと、もと来た道を引き返そうとする。

一方、右の頬に傷がある男は娘を肩にかつぐと、林の奥に足を進ませる。

伊助が後を追うのは、頬に傷がある男の方だ。

伊助は気配を消しながら、男の跡をつける。

(どこに行くんだろう?)

そう思いながら後をたどって行くと、急に開けた場所に出る。

掘っ立て小屋が目に入る。

(こんなところに?)

結構、大きい。だが、妙な感じのする作りだ。

以前からある古い小屋に、新しく資材を継ぎ足して広くしたような感じである。

男は、女子を肩にかついだまま小屋の中へ入って行った。

伊助は小屋に近づこうと、音をたてずに慎重に足を進ませる。