虎之助をはじめ、伊助たちは十兵衛の指図を受けて、神隠しのあった町を調べた。

神隠しは、夜ではなく昼間に起きているのが妙に引っかかった。

伊助たちは、人通りの少ない、当たりがつきそうな場所を見張っていた。

そして今日、思ったとおりに賊が現れ、神隠しの正体をつかんだのである。


いま、女子を拐った輩どもは、それぞれ逆方向に別れている。

(追うなら、籠の方だよな)

伊助は籠の行き先をつきとめようと、後をつける。

しばらく追っていると、籠をかつぐ二人は林のなかに入って行く。

木が邪魔になって籠が進めないのではないかと思ったが、そうならないように木を切り倒している。

手の込んだことだ。計画的に施したとしか思えない。

籠は、それほど進まない所で不意に止まった。

そこには、浪人風情の男がひとり、立っていた。

右の頬にある刀傷が目立つ。