虎之助は両膝を地に降ろし、頭を下げる。


「申しわけございませぬ!」


許してもらえるかどうか分からないが、必死で弁解するしかない。


「実は、拙者は…」


話を続けようとする虎之助を、利巌が右手の掌を向けて制する。


「まあ、立ち上がるがよい」


その言葉に、虎之助は立ち上がる。

利巌は、虎之助が乗り越えた塀の方へ、視線を移す。


「塀の向こうにいるのは、おぬしの連れか?」


虎之助は、ギクッと驚く。

塀の外にいる五人は、完璧といえるほどに気配を断っている。

虎之助の顔に「なぜ、わかる?」という思いが浮き出る。

目を見開いて利巌を凝視する虎之助に、利巌は言った。


「皆も、つれて来るがよい。屋敷の中で話を聞こう」


利巌は、その足を屋敷に向けて歩いて行く。