平助の全身から、冷や汗が吹き出る。

身体中を滴る汗の量が、尋常ではない。

一気に喉がかわく。

何もかもが自分のはるか上をゆく、そういう相手に後ろをとられ、いったい何が出来るというのか。

(俺も終わりか…)

平助が己の最期を悟ったとき、後ろにいる男が告げる。


「お前の主人に伝えよ」


その言葉は、死を覚悟した平助にすれば、意外だった。


「我らは、黒幕であるお前の正体を知っている。佐々本殿に、再び害をもたらす気であれば」


後ろから感じる殺気が、ズドッと平助の身体を突き抜ける。


「我ら裏なる柳生が、お前の首をもらい受ける、とな」


限界を目指すような心臓の鼓動が、己の耳にうるさく響く。

「主人に伝えよ」というからには、自分は生かされ、助かるのだろう。

だが、全然、生きた心地がしない。