屋敷の様子を見にきたが、乗り込んだところで何もできないまま、斬り捨てられそうだ。

(さて、どうするか)

なにか良い考えはないかと、頭を働かせようとした、そのとき。


「!?」


強烈な殺気が、ドンッと平助の背中に叩きつけられる。

いきなりだった。

完全に不意を突かれた平助は、まず、心を締めつけられる。

下手に動くと

(き、斬られる!)

そういう精神状態に捕らわれた彼は、身体をがんじがらめに縛り上げられた如く、まったく身動きできない。

石像のように固まっている彼の後ろから、静かに声が響いた。


「こんどは、柳生を探りに来たか」


その声から伝わるのは、暗殺を生業(なりわい)とする同業者の匂い。

だが、葬ってきた相手の数が、格段にちがうことを肌で感じる。

その分、のり越えてきた修羅場の数も、ちがうはずだ。