藤吉から、間者追跡劇の話を聞いた虎之助は「そうか」と言うと、腕を組んでしばらく思案する。

ふと、思いついたように言った。


「やつら、また来るかも知れんな」


虎之助の言葉に、喜八郎が眉をひそめる。

これほど完膚なきまでに叩きのめされて、再び挑む気になれるだろうか。


「この屋敷にですか?」


虎之助は、首を横に振った。


「利巌様のお屋敷に、だ」