虎之助たちが、指定された日時に宗矩の屋敷に到着する。

宗矩の待つ部屋に案内されると、宗矩のとなりにもう一人の人物が正座をしていた。

眼光するどく、全身から溢れんばかりの強さを放っている。

ただ者ではないのは、明らかだ。

部屋に入り正座する虎之助たちに、宗矩は言った。


「息子の十兵衛じゃ」


柳生十兵衛三巌(やぎゅうじゅうべえ・みつとし)――

宗矩の長男である彼は、仕えていた家光の勘気に触れ、十年以上にわたって蟄居を命ぜられた。

その間、柳生の里で暮らしていたが、近年復帰して江戸にもどり、いまは再び家光に仕えている。

虎之助は目をみはる。

(このお方が…)

宗矩の威圧感は相当なものだが、十兵衛の威圧感も半端ではない。

現代人には隻眼で知られる十兵衛であるが、彼の両目は開いていた。