藤吉は連也に語る。


「あっしたちは、その屋敷をねぐらとし、剣の修行に励んでおりました」


屋敷には、すでに十人の若者が住んでいた。

彼らは、藤吉よりも五つから十ほど年上であった。

藤吉は彼らと共に、剣の修行に明け暮れる日々を過ごす。

厳しいが、嫌ではなかった。

畳の上で寝られる。それも、布団の中で。

腹いっぱい、米の飯が食える。

そういう暮らしを絶対に手放したくないと思った藤吉は、ひたすら修行に精を出す。

皆、おなじような境遇にあったせいか、年が離れていても仲が良かった。


連也が藤吉に問う。


「里に帰りたいと思ったことは、なかったのか」

「いえ、一度も」


里に帰ったところで藤吉を待っているのは、理不尽に暴力をふるう父親と、全然たすけてくれない母親である。


宗矩が、そういう藤吉たちを拐うように連れてきたのには、わけがあった。