普段着の着物をまとった主人は、藤吉たちの前であぐらを組み、各々を見定めるような目で藤吉たちに視線を走らせる。

その鋭い目が放つ威圧感は、尋常ではない。

藤吉たちは金縛りにあったように、まったく身動きできなくなる。

藤吉たちを屋敷に連れてきた家臣、池永の表情も固くなる。

しばらくして、主人は池永に向かって口をひらいた。


「うむ。明日から、さっそく稽古をつけてやれ」

「はっ」


池永が主人に平伏し、短く答える。


「手はず通りに、たのむぞ」

「心得てございます」


それを聞いた主人は、すっくと立ち上がると部屋を出る。

その人こそ、柳生但馬守宗矩であった。

当然、屋敷は宗矩を当主とする柳生屋敷である。


だが、藤吉たちは、この屋敷に住み込むわけではない。

屋敷を出た五人は再び馬に乗せられ、数里はなれた場所にある別の屋敷に連れて来られる。