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「せんせーってどうしてそんなに素敵なんですか?」
「柴崎さん、」
「そんな先生に釣り合うようにですよ? この柴崎、自分磨きを頑張ろうと思いましてね! 毎日せっせとバイトに励んでいたというわけです! 全ては先生の! ために!」
「意味がわかりませんがそれはどうも。ところで柴崎さん、」
「はい?」
「うちの学校はアルバイト禁止です、知っていますよね? 校則違反ですよ」
「……はは?」
先生は作り笑いした私の方をちらりとだけ見て、怪訝な表情を作るとため息を吐いた。
サラサラの黒髪がうっすらかかった彼の瞳はいつも無気力で、強い。
矛盾した二つの感情が同居した不思議な黒目。そしてその雰囲気は人を必要以上に引きつけてしまう。
高校に入学して2年目の秋、居酒屋でのアルバイトがどういうわけか速攻で学校側にバレた。
まだ始めてから二ヶ月も経っていないというのに。
職員室の涌井先生を訪ねると、秒で生徒指導室なる小部屋に強制連行された。

