「止めても無駄だよ」
ちゅ、と今度は触れるだけのキス。
かーっと熱くなる顔を隠す余裕もなく、先生を見詰めるだけしかできない。
なにこれ。恥ずかしい。超恥ずい。でも嬉しい。変な感じ。
好きって言われた。
既に感情はいっぱいいっぱいなのに、先生はまだ余裕そうに私の髪の毛を撫でてもう一度キスしようとするから、慌てて彼の胸板を押す。
「……こ、これ以上は、……こんなの心臓持たな……!」
「……柴崎さん」
「は、いっ」
心臓死ぬ。つまり私死ぬ。
夢みたいな現実に殺される。幸せすぎて。
……も、もしかしてまた好きって言ってもらえるんですかね!?
と、少しだけ期待しながら羞恥心を押し殺し、先生の顔を見上げた。
「……グロスは校則違反だよ」
――まあだけど。やはり現実。私の妄想通りに都合よくはいかないみたいで。
真面目な先生らしい言葉になんか脱力。

