カウンターを見ると、確かに空の席にはチョコレートが上品に並べられていた。


「ハルさんが、バレンタインだから女の子にだけ用意してくれたの!」


「そう。女の子は貰えないからね」


空とハルさんが二人で「ね~」と声を合わせた。


「俺も食べたい」

「…だめ」

そう呟いた空が俺の隣に来て背伸びして、小さな声で俺に言った。


“昨日の空のケーキ食べて”


その言葉に思わず笑顔で頷いて、そこに二人だけの時間が流れた。